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2025-06-07号
最近、科学技術の分野から、私たちの想像を超えるような興味深い研究成果が次々と発表されています。宇宙の謎に迫る発見から、生命の根源、そして量子の不思議な世界、さらには人間をサポートするロボット技術まで、まさに未来の扉を開くようなニュースばかりです。今回は、提供された複数の記事から、特に注目すべき最先端の研究開発についてまとめてご紹介します。
宇宙と未知への挑戦
まずは、広大な宇宙とそこでの活動に関する話題です。太陽系から約1万5000光年という遠い場所に、科学者を困惑させる「謎の天体」が発見されました。この天体「ASKAP J1832-0911」は、約44.2分という非常に長い周期で、電波とX線を同時に明滅させるという特異な挙動を示しています。長周期電波トランジェント(LPT)と呼ばれるタイプの天体は2022年から検出されていますが、X線を放射していることが観測されたのは今回が初めてのことです。電波とX線のパルスが緊密に同期していることから、これらは同じ天体から発せられていると考えられています。この発見は、この種の天体がこれまで考えられていたよりも著しく高エネルギーである可能性を示唆しており、その正体は不明なままです。国際電波天文学研究センターのジテン・ワン氏は、このような挙動を示す恒星はこれまで確認されておらず、「恒星の新しいタイプの挙動を目の当たりにするのはワクワクする」と述べています。
一方で、宇宙への挑戦を続ける人類にとって、微小な存在が大きなリスクとなりうるという課題も明らかになっています。NASAの探査機組み立てに使われたクリーンルームの中から、なんと26種もの新種のバクテリアが発見されました。学術誌「Microbiome(マイクロバイオーム)」で発表された論文によると、NASAのジェット推進研究所(JPL)の科学者グループとインド・サウジアラビアなどの研究機関が協力して実施した調査で特定されたものです。これらのバクテリアは、厳重に管理されたクリーンルームという生物にとって非常に過酷な環境で生き延びており、除染や放射線に対して非常に高い耐性を持っていました。こうした極限環境微生物が、宇宙ミッションを通じて探索する惑星に影響を与えるリスクが取り上げられており、微生物汚染の監視と意図しない微生物の持ち込み(植民)を防ぐことが極めて重要だとされています。興味深いことに、これらの強力なバクテリアはDNAの修復、代謝の強化、有害分子の解毒といった特有の遺伝的防御システムを備えており、医療や食料保存などの産業分野に応用できる可能性も示唆されています。
宇宙への移動そのものを革新する技術開発も進んでいます。火星への片道移動に通常約7〜9カ月かかるのを、核融合ロケットを使えば3〜4カ月と半分以下に短縮できる可能性が示されています。英スタートアップ企業のPulsar Fusionが構想する「Dual Direct Fusion Drive(DDFD)」エンジンは、理論上秒速500kmという現在のロケットの約100倍の排気速度を実現できるとされています。これはより少ない燃料で高速移動が可能になることを意味します。核融合とは、軽い原子核が合体して大きなエネルギーを生み出す反応で、太陽の中心で起きているのと同じ仕組みです。核融合ロケットは、この反応で生まれた超高温プラズマを噴き出して推進力を得るというアイデアです。実現には、数百万度のプラズマ制御や冷却、放射線防護など、多くの技術的課題がありますが、大量の物資輸送や深宇宙探査、宇宙経済の構築に大きく貢献する可能性を秘めています。Pulsar Fusionは2027年までの宇宙での核融合実現を目指していますが、これは専門家の間では非常に野心的と見られています。
このような核融合技術は、地上での発電研究でも進展が見られます。フジクラと核融合関連スタートアップの京都フュージョニアリングは、英国原子力公社の核融合開発プロジェクト「STEP」に関連する高温超電導電磁石領域の研究推進案件の第1ステージを完遂したと発表しました。これは核融合発電の商用化に向けた技術開発に寄与するもので、フジクラの高温超電導線材を用いた電磁石部品の製造や、京都フュージョニアリングとの共同での設計・製造・評価が含まれます。
量子世界の不思議と応用、そして科学の限界
私たちの身の回りや宇宙の現象を理解するために不可欠な物理学、特に量子の世界では、常識を覆すような現象の発見や技術開発が進んでいます。
例えば、水の波紋が「過去」へ逆戻りする現象が確認されました。フランスのESPCIの研究チームは、水槽にできた波紋が広がった後、水槽を瞬間的に約2ミリ秒だけ下向きに21倍の重力で加速させることで、波紋が中心へ収束し、最初に作ったスマイルマークやエッフェル塔といった複雑な形をほぼ同一に再現することに成功しました。研究者たちはこれを「瞬間タイムミラー」と呼んでおり、波紋が広がっても情報が失われていなかったことを示しています。
量子力学特有の現象を利用した技術としては、量子電池の超高速充電の可能性が示されています。台湾の国立成功大学(NCKU)で行われた研究では、1つの量子電池を同時に2つの場所に存在させる「重ね合わせ」系の実証実験に成功し、充電を速くできる可能性が示されました。これは将来的に電気自動車の充電時間を数十分から数分に短縮する夢の技術につながるかもしれないと期待されています。また、量子の「超挙動」と呼ばれる現象は、理論計算上、エネルギーがほとんどゼロの状態から超高エネルギー粒子が出現しうることを示しています。米チャップマン大の研究者たちは、これをまるで「無からエネルギーが作られる状態」と表現していますが、全体ではエネルギー保存則は守られており、波の干渉によって局所的にエネルギーが集中するトリックのようなものだと説明されています。
さらに、量子の世界では「観測しないこと」が物理現象に影響を与えることもあります。イギリスのインペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)の研究では、「光子が出なかった」瞬間を選ぶことで、物体の冷却限界をさらに押し下げられることが実証されました。レーザーで物体を照らし、光子検出器で「ゼロ」が検出されるたびにその静けさを確定させるように働きかけることで、物体の振動エネルギーが下がるという、古典物理では起こりえない現象です。この技術は、量子コンピューターのノイズ抑制などに応用できると期待されています。
物理学の根源的な問いへの挑戦として、重力が量子的性質を持つかを探る実験も進められています。米MITの研究グループは、センチメートルサイズの振り子をほぼ絶対零度近くまで冷却する技術を開発しました。これは、将来的に2つの冷却した振り子を重力のみで相互作用させる状況を作り出し、その間に量子もつれが生じるかを検証するための第一歩です。重力以外に接点を持たない物体間で量子もつれが観測されれば、それは重力が量子的な相互作用を媒介している決定的な証拠になる可能性があると研究者たちは語っています。
しかし、科学にはまだ予測の限界、「決定不能性」の問題が存在します。これは、数学者やコンピューターサイエンティストの間では知られていましたが、物理学の世界でも、ラプラスの悪魔のように現在の全てを知る者でも未来を完全に把握できない、本質的に答えが出せない問いが存在することが明らかになってきています。たとえ無限の計算能力を持つ量子コンピューターを使っても計算不能な問題が存在し、理想化された無限のシステムでは予測不能な側面があることが示されています。この事実は、物理学で知りうる範囲に大きな制限を課すものですが、研究者たちは「それが解明不能だという事実、解明不能であると証明できるという事実が、ひとつの答えです」と述べています。
生命とロボティクスの進化
私たちの体や生活に直結する生命科学やロボティクスの分野でも、注目すべき研究が進められています。
大阪大学やバイオ素材開発のSpiber(スパイバー)などの研究チームは、狙った細胞がどのように変化してきたのかを追跡・解析する新しい技術を開発しました。これは、細胞にバーコードタグのような短いDNA配列を目印として付け、特定の性質を持つ細胞を選び出して、保存しておいた初期の細胞集団からその細胞を取り出すことで、**「タイムマシンのように時間を巻き戻して細胞を解析できる」**というものです。この技術は、抗がん剤に耐性を示す細胞ができる仕組みの解明など、がん研究への応用が見込まれています。
細胞レベルでの研究では、脳の機能に関する進展もありました。奈良先端科学技術大学院大と九州大の研究グループは、記憶などをつかさどる脳の海馬の機能が加齢によって低下するメカニズムを突き止めたと発表しました。加齢に伴って神経幹細胞の数が減り機能が衰える原因が、特定の酵素の減少によるものであることを特定し、その酵素の量を元に戻すと機能も回復することを確認しました。この発見は、**老化した細胞を若返らせる「リプログラミング」**が可能かもしれないという期待につながり、アルツハイマーなどの加齢性の神経疾患の治療への応用にも期待がかかっています。
このような生命現象の理解が進む一方で、「人間によって設計・作製された生命体」である人工生命の研究も行われています。バイオ技術やコンピューター計算、ロボットを駆使して生命現象を人工的に再現しようとする試みであり、合成生物学といった分野も生まれています。改変した生物の利用には安全性や倫理面の課題も多く、生態系への悪影響や想定外の増殖を防ぐ仕組みづくりが不可欠とされています。
技術が私たちの身体能力を拡張する分野も進化しています。「着るロボット」とも呼ばれる外骨格ロボットを開発する中国の「傲鯊智能(ULS Robotics)」が、シリーズBで数千万元(数億円超)を調達し、消費者向け製品の量産を加速すると報じられています。同社の外骨格ロボットは、自動車製造、空港、物流などの産業シーンで既に展開しており、ドイツや米国など17カ国で販売網を確立しています。今後は、観光地での歩行アシストや在宅介護といった消費者向けへの活用も模索しており、創業者は**「今後5年以内に、外骨格ロボットはスマートフォンと同様、人間の能力を自然に拡張するものになる」**と述べています。調達資金は外骨格ロボットと人工知能(AI)技術の融合促進にも充てられる予定です。
こんにちは!日々の生活や社会の動きについて、科学的な視点や最新のデータから考えてみるのは面白いですよね。今回は、最近目にしたいくつかの興味深いニュースソースから、現代社会の多様な側面、特に「睡眠」「結婚や恋愛」「ジェンダー」「生き方」といったテーマについて掘り下げてみたいと思います。
睡眠の質と性的活動の関係
まず、私たちの健康に不可欠な「睡眠」に関する話題から。ナゾロジーの記事によると、「就寝前に性的活動をすると睡眠の質が上がる」というテーマについて、性科学と睡眠科学の観点から科学的な調査結果が報告されています。
この研究結果は明確で、性交とマスターベーションのどちらの場合も、いくつかの共通するポジティブな効果が見られたとのことです。具体的には、夜中に目覚める時間(WASO)が短くなり、眠りの持続性が改善されていました。性的活動をしなかった夜の平均覚醒時間が約23分だったのに対し、オーガズムを伴う活動を行った夜は約16分にまで減少したそうです。
また、「睡眠効率(Sleep Efficiency)」(ベッドにいた時間のうち、実際に眠っていた時間の割合)も向上しました。性的活動なしの夜が91.5%だったのに対し、マスターベーションでは93.2%、性交では93.4%と、いずれも2%程度睡眠の質が高まっていたとされています。ただし、研究者は、この数字で示された2%の向上は、客観的評価においては意味のある改善である一方で、参加者の主観的な実感、例えば「寝つきの速さ」や「ぐっすり眠れたかどうか」といった自己評価においては、明確な差は見られなかったと述べています。研究者は、中途覚醒時間(WASO)と睡眠効率(SE)という客観的な指標における小さいながらも有意な改善を重要視しています。
興味深いことに、この研究では、性的活動の翌朝の「気分」や「やる気」についても主観的な評価が調査されています。その結果、性的活動をしてから寝た場合の方が、しなかった場合に比べて明らかに高く、特にパートナーとの性行為でオーガズムを得た場合にその効果が最も顕著だったそうです。マスターベーションでも同様の効果は認められましたが、性交よりも効果の大きさは明らかに小さかったとのことです。これは、単なる性的快楽だけでなく、人とのつながりや身体的接触が心身に及ぼす影響の大きさを示唆する結果と言えるでしょう。
結論として、性交やマスターベーションによって中途覚醒が減少し、睡眠効率がわずかに改善されることが客観的な測定から明らかになりました。毎晩の睡眠を劇的に変える万能薬ではないものの、心身の回復や気分の整え方のひとつとして、科学的に根拠のある選択肢になり得ることが示唆されています。もし最近よく眠れないと感じているなら、試してみる価値はあるかもしれません。可能であれば、パートナーとの性交の方が翌日の活力につながる可能性も指摘されています。
少子化の要因と日本の結婚事情
次に、社会的な関心が高い少子化の問題について、日本経済新聞の記事を見てみましょう。2024年の合計特殊出生率が9年連続で低下し、過去最低の1.15を更新、出生数も統計開始以来初めて70万人を割ったという深刻な状況が報告されています。
この記事によると、国立社会保障・人口問題研究所の研究では、少子化の要因の8割は未婚化によるものだと指摘されています。2024年の婚姻件数はわずかに増えたものの、依然として年間50万件を下回る水準が続いています。記事では、なぜ人々が結婚しなくなったのか、識者に聞くシリーズの導入として、岩澤美帆氏のコメントが紹介されています(記事自体は会員限定で全文は読めません)。関連トピックを見ると、「恋人なし」が増えていることや、推し活による疑似恋愛、アプリ婚活での価値観重視などが背景にある可能性が示唆されています。
人口を維持するためには合計特殊出生率が2.06~2.07必要とされる中で、日本の現状は大きく下回っており、国の想定より14年も早く人口減少に拍車がかかっているとのことです。
現代の恋愛と「友情結婚」という選択肢
未婚化が進む一方で、恋愛や結婚の形自体も多様化しています。Forbes JAPANがYahoo!ニュースに配信した記事は、マッチングアプリ全盛時代の現代における「恋愛4段階モデル」について紐解いています。
この記事では、現代の恋愛において「可能性のある関係」「交際中」といった段階がどのように捉えられているか、調査に参加した学生たちの声を通じて紹介しています。例えば、「可能性のある関係」は、お互いのことをもっと知るために会ったり、いろいろな場所に出かけたりする、恋愛の相性を探求する段階と定義されています。この段階ではまだ曖昧さが残るものの、恋愛関係に移ろうとする動きが見られるとのことです。デジタルプラットフォームが接触を容易にしても、親しみと信頼を築く経験に取って代わることはなく、どれだけ相手に心を開くかについては慎重さが残っていると指摘されています。
続く「交際中」の段階は、相手を1人に絞ることだと捉えられており、正式な関係であるという感覚を含んでいます。この段階では、「愛してる」の言葉を交わしたり、お互いの友人や家族に会ったり、心身ともに親密になるなど、恋愛における大きな節目と捉えられています。ポリアモリーやカジュアルデートなど、恋愛関係をめぐる社会的規範が柔軟になったとしても、学生の大半は依然として相手を1人に絞ることを決定的な指標とみなしているそうです。これは、この段階が安定性をもたらし、うまくいっているという感覚と期待感をもたらすからだろうと考察されています。
このような恋愛観や結婚観の変化の中で、近年注目されているのが「友情結婚」という形です。47NEWSがYahoo!ニュースに配信した記事では、**恋愛も性行為もない「友情結婚」**を選んだ夫婦の事例が紹介されています。
この記事によると、「友情結婚」とは、2人の間で性行為をしないと合意して行う正式な結婚とのことです。事例として紹介されているサツキさん(妻)とミナトさん(夫)は、お互いを「タイプじゃない」と言いつつも友情結婚し、一緒に暮らし始めて3年半が経っても夫婦仲は良好だそうです。2023年には不妊治療と同じ方法を使って、性行為なしで子どもも生まれたと報告されています。
彼らが友情結婚を選んだ背景には、それぞれ異なる事情がありました。サツキさんは同性に性的欲求を抱かないタイプで、母親からの結婚や出産へのプレッシャーを感じていたこと。ミナトさんは恋愛対象は女性だが、性的欲求は男性にしか抱かないタイプで、女性と交際しても性的な関係になれずに別れることが続き、30歳になった頃に父親から孫の顔が見たいと言われたこと。2人とも「恋愛や性行為を前提としない結婚の形」に関心を持ち、インターネットの掲示板で知り合ったのがきっかけでした。特にサツキさんは、ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」を見て、恋愛や性行為を前提としない結婚の形があることに興味を持ったそうです。
この事例は、結婚という形が必ずしも恋愛や性行為と結びついているわけではなく、多様なニーズに応える形で変化していることを示唆しています。
収入と結婚の安定度、そしてジェンダー規範
結婚に関するもう一つの側面として、Forbes JAPANの記事は、女性が男性より稼ぐカップルが結婚の安定度に影響を与える可能性についての研究報告を取り上げています。
この記事によると、男性と女性のカップルが結婚した場合、どちらが主に生計を担うべきかという問題に関して、伝統的な規範がいまだに根強く存在していることが示唆されています。新たな研究結果でも、女性が男性のパートナーよりも稼ぎが多い場合に、2人の関係にひびが入るケースが多いことが明らかになったそうです。さらに、当事者ではない人でさえ、そうした状況は関係への安定度や満足度で劣り、離婚につながる可能性が高いと見ていることも分かっています。
特に驚きなのは、2025年の今になっても、「夫は妻よりも多く稼ぐべきだ」という考え方が、人々の物の見方にこれほど大きな影響力を及ぼしている点です。米国の男女間の賃金格差は縮小傾向にあり、女性がパートナーより収入で上回る確率は高まっています。しかし、職場における女性の地位が向上しても、男女の関係に関するステレオタイプは追いついていないことが、この研究で示唆されているとのことです。私たちは依然として、男性を一家の大黒柱、女性を家族の世話役と考えがちであり、女性が男性より稼ぎが多い関係を不自然だと捉える人もいると記事は述べています。
学術誌『Sex Roles』に掲載された研究では、異性と結婚している500組以上のカップルを調査し、家計収入で女性の方が多くを占める場合、ふたりの関係への満足度が下がることを明らかにしました。この傾向は、特に夫に関して顕著だったそうです。女性パートナーよりも稼ぎが少ない男性は、男性らしさに自信が持てず、能力が十分でないと感じる傾向が強く、これが妻との関係の質の低下に結びついていたとのことです。女性側も、伝統的な男女の役割分担に反することによる居心地の悪さを感じる傾向はありましたが、男性ほどではなかったと報告されています。
この研究は、経済的な側面だけでなく、それに絡むジェンダー規範や個人の内面的な感情が、結婚生活の安定に影響を与えうることを示しています。
睡眠の質をサポートする食事の工夫
最後に、再び睡眠に関する話題に戻り、プレジデントオンラインがYahoo!ニュースに配信した記事から、睡眠の質を高めるための食事の工夫について見てみましょう。
この記事では、「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンの生成に関わるトリプトファンという成分の重要性が解説されています。トリプトファンがメラトニンに変換されるには14〜16時間程度かかるため、**「夜、寝る前にホットミルクを飲むと安眠できる」というよりは、「朝に牛乳を飲むべき」**という点が注目されています。朝に牛乳を飲むことで、寝る頃にちょうどメラトニンの生成が完了し、安眠に導いてくれるとのことです。
牛乳以外にも、大豆製品や卵、バナナ、ナッツ類、肉や魚などにもトリプトファンが豊富に含まれています。特にバナナはトリプトファンが多く、消化吸収も早いため、朝食にバナナと牛乳を摂ることで、エネルギー源を補いながら、夜も快適な睡眠をとれるようになると推奨されています。
さらに、朝食に納豆や卵を含めることもおすすめです。これらはタンパク質が豊富で準備が簡単なため、忙しい朝にも適しています。タンパク質は体の修復やエネルギー供給に不可欠な栄養素であり、不足すると睡眠に悪影響を及ぼす可能性があるため、日々の食事からしっかり摂取することが質の良い睡眠を得るコツだと述べられています。
このように、朝食の内容を工夫し、特にトリプトファンを豊富に含む食品を取り入れることによって、睡眠ホルモンの生成がスムーズに進み、より深い睡眠へ導いてくれる可能性があるそうです。
最近、テクノロジーの進化、経済の変動、そして働き方の多様化など、様々な分野で興味深いニュースが報じられています。これらのニュースは、私たちの社会や経済の現状、そして未来に向けた変化の兆しを読み取る上で示唆に富んでいます。今回は、いくつかの注目記事を取り上げ、それぞれの内容を見ていきましょう。
ロボットの進化と多様な役割
日本のロボット文化には独特な側面があります。本来の目的である「労働」をしない、いわゆる「役に立たないロボット」が多く存在し、開発されています。この動きは、日本独自の背景や感性から生まれたものであり、ハード・ソフト両面で日本は世界的に先行しているとされています。その背景には、「ドラえもん」のような友だちとしてのロボットが登場するフィクション作品の影響が大きく、戦後の漫画やアニメにおける表現の自由度が高かったことなども関係していると考えられています。これらの架空のロボットたちが、現代の「役に立たないロボット」の開発者たちに影響を与えているのです。
一方、ロボットが明確な目的を持って活用される未来も描かれています。イーロン・マスク氏は、人類より先にテスラが開発した人型ロボット「Optimus」を火星に送る計画を進めていると報じられています。早ければ2025年にも最初の5体が火星に打ち上げられる予定で、2028年には火星基地建設のための資材と共に最大20機のロケットを送ることが目指されています。マスク氏は、2030年代には火星への移動が日常的になる可能性にも言及しており、Optimusのロボット集団でコロニー建造を進める構想です。これは、労働や環境整備といった具体的なタスクを担うロボットの活用事例と言えるでしょう。
AIの光と影:期待と現実、そして不正
AI分野では、期待が高まる一方で、厳しい現実や不正も報じられています。ロンドンを拠点とするAIスタートアップ企業Builder.aiが破産申請したニュースは大きな注目を集めました。かつて15億ドルもの評価額を得て、Microsoftやカタール政府系ファンドからの支援も受けていたこの企業が破綻した理由の一つは、AIが行っていると謳っていた作業の多くが、実際には約700人のインド人エンジニアによる人力作業だったことが発覚したためです。これは「AIウォッシング」と呼ばれ、見かけの最新技術に過度な期待を抱くことへの注意喚起となっています。
日本国内でも、AI研究開発ベンチャー「オルツ」が、循環取引によって売り上げを過大に計上し、決算を粉飾した疑いで証券取引等監視委員会の強制調査を受けていたことが明らかになりました。同社はAI議事録サービス「AI GIJIROKU」で急成長し、東証グロースに上場していた企業です。AI技術が注目される中で、その実態やビジネス運営における透明性が問われています。
世界経済への潜在的な影響:日本国債と円キャリー取引
世界の金融市場に関しては、ウォール街の著名なストラテジストから日本国債の利回り急上昇による**「世界の金融市場の終末」が迫っている可能性が警告されています。日本国債の長期金利は、インフレ懸念、政府支出増加、そして日本銀行による国債買い入れの減額といった要因で上昇が続いています。これは、長らく低金利だった円で資金を借りて海外の高利回り資産に投資する「円キャリー取引」**の巻き戻しを引き起こす可能性があります。投資家が海外資産から資金を引き揚げて日本に戻せば、アメリカを含む他の市場に深刻な影響を及ぼしかねないと指摘されています。日本の国債市場の動向は、世界の金融市場にとって非常に重要であるとされています。
産業構造の変化と新たな投資分野
世界の自動車業界では、大きな再編の動きが見られます。日産の傘下にある三菱自動車が、台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)から電気自動車(EV)のOEM供給を受けることで合意したことが報じられています。これは、日産の経営難やホンダとの経営統合交渉の破談などを背景に、三菱自動車が生き残りのためにホンハイと組まざるを得なくなったとの見方があります。ホンハイは日産やホンダにも連携を呼びかけており、今回の提携が世界の自動車業界の再編を促し、自動車の知的財産や技術が中国やアジアの新興国へ移転するきっかけにもなると分析されています。BYDをはじめとする中国企業のEV分野での競争力向上も、こうした再編の動きを後押ししています。
エネルギー分野では、未来のエネルギー源として注目される核融合発電に関する投資が活発化しています。日本の核融合スタートアップであるEX-Fusionが約26億円を調達したことが報じられており、国内の核融合スタートアップ4社の企業価値の合計が1000億円を超えたとされています。日本政府も2030年代の核融合発電実証を目指しており、民間投資も流入しています。
働き方と雇用の新しいトレンド
日本の働き方に関しては、新型コロナウイルスの流行を経てテレワークの実施率に変化が見られます。実施率は減少したものの、「週3日以上」の在宅勤務を行う人の割合は31.8%と一定の水準を維持しており、出社と在宅勤務を組み合わせた**「ハイブリッドワーク」が定着**した実態がうかがえます。在宅勤務で生産性が高いと感じる人も増えていますが、同時に特有の課題も存在します。オフィス環境では、フリーアドレスの導入率も50.4%に達しています。
労働市場では、若手社員を中心に「静かな退職(Quiet Quitting)」という現象が広がっていることが指摘されています。これは、実際に退職するわけではなく、全力で自己成長を目指す姿勢をやめ、最低限の業務だけを淡々とこなす働き方です。長時間労働の是正、働き方の多様化(ワークライフバランスや育児への参加など)、ストレス対策の意識向上、そして成果が給与に結びつきにくいといった欧米の労働文化の影響などが背景にあります。静かな退職者は、評価や成長機会よりも安定した給与を重視し、労働時間や労力を最小限に抑えようとする傾向があり、従来の「やる気を引き出す」マネジメント手法が響きにくい新たな課題として企業は直面しています。
中国では、大卒者の空前の就職氷河期を背景に、「働くふり会社(假装上班公司)」というビジネスが登場し、流行しています。これは、失業中の若者などが家族に失業を知られないように、毎日オフィスに出勤しているように見せるための偽のオフィススペースやサービスを提供するものです。1日数百円でオフィス環境やWi-Fi、ドリンクなどが提供され、中には出勤記録の撮影サービスや、架空の上司とのトラブルを演出するオプションまで存在するとのことです。これは、若者の高い失業率という社会問題を映し出しています。
最後に、従業員の睡眠時間と企業収益の関係について、興味深い調査結果が出ています。慶應義塾大学の教授による分析によると、社員がよく寝ている会社ほど利益率が高いことが明らかになっています。かつての日本では長時間労働が美徳とされる風潮がありましたが、OECDのデータでは日本人の平均睡眠時間は他の先進国と比べて短いとされており、十分な睡眠が企業の業績向上に繋がる可能性が示唆されています。